「江不利満氏の優雅な生活」
”えぶりまんし”と読む。どういう発想なのか。やはり岡本喜八監督はよくわからない。
「独立愚連隊」に続き、岡本喜八監督作品を紹介したい。
原作は山口瞳、ごく普通のサラリーマン江不利のごく普通のあたりまえの日常を、
ユーモアたっぷりに描いた映画。
岡本喜八監督は、タイトルについてはセンスを感じられない。しかし映画については
まさに”ユーモア”にあふれ、”ユーモア”という言葉がぴたりとはまる映画を作る。
邦画にあって、フランス的な小粋なセンスにあふれているのだ。
ただ、誤解しないでほしいのはあくまで邦画なので、フランス的なセンスはあるけれども
フランス的な映像はそこには存在していない。あくまで比喩である。
この作品についていえば、原作者である山口瞳のユーモア+岡本喜八監督のユーモアで
原作がおもしろい上に、映像的なユーモアが重なって、観ていて楽しくなってくる。
フランスの映画で「ぼくの叔父さん」というのがあるが、感覚的にはあれに似ている。
作品中、江不利が自分の生活を説明するシーンがある。
「スーツは払い下げの軍服を仕立て直し、これがまた丈夫でいい」
などと江不利自身が自信満々にのたまうのであるが、そのくせ次には
「靴下からは足の指が見えている」なんて台詞が続くのだ。
戦後の高度経済成長期を知るうえでも貴重な映像資料だと言っていい。
ぜひ中学校あたりでは、社会科の勉強にこの映画を生徒に見せるべきだ。
頭の固い義務教育ばかりでなく、ユーモアこそ人間の生活に欠かせない
エッセンスだということを多くの中学生にも教えてやらないといけない。
「ファーゴ」ばかりじゃ酒鬼薔薇しか生まれないのだ。
もっとも「ファーゴ」にもユーモアがあるので、それを理解できないというのは
根本的に何かが違っているとしか言いようがないのかもしれないが。
岡本喜八監督も偉大だが、コーエン兄弟もまた偉大だということを忘れてはいけない。
映画の面白さというのは、一概に映像の派手さや、出演者では決められないもの。
映画の要素がしっかりしていて、それがまたしっかりと組み立てられれば、
映像の派手さや、豪華な出演者はそれほど大きな要因ではないのだ。
それを岡本喜八監督の映画からも観て感じてほしい。
「江不利満氏の優雅な生活」から話がずれてしまったが、とにかくそんなことだ。
あまり疑問を多く持ってはいけない。何も考えずに映画を観ること。
純粋に感じ、笑えることが幸せだ。(笑)
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