「フルメタル・ジャケット」

メジャーな映画なので説明はいらないかもしれません。

公開当時、映画館に足を運ばないで有名なこの僕が初日に観に行ったという映画です。
これだけでも観る価値があります(笑)。

もう10年近くの前の話なんだと思うと、ほんと年をとったと思います。

それはさておき、公開時”「プラトーン」よりも素晴らしい”などと評されていたので、僕は
当然「プラトーン」を観る気分で映画にのぞみました。しかし・・・この映画は「プラトーン」
と同じ次元では語ることのできないものでした。「プラトーン」を期待していた僕は、えらく
つまらなかった記憶があります。

何年かたって、やはりもう一度観てみようとビデオを借りました。

映画というのは観る時の気分によって、感じ方が随分と違うものです。前に観た面白い
映画をビデオで観るとそれほどでもなかった、という記憶は誰にもであると思います。

「フルメタル・ジャケット」の場合、それが僕は逆でした。

当時、面白くなかった映画が、しごく面白く感じられました。きっとすでに戦争映画という
ジャンルでないことがわかっていたのと、「プラトーン」を期待しなかったせいが大きいと
思います。ここでもう一度、確認しておきますが「フルメタル・ジャケット」はベトナム戦争
を扱った映画ですが、戦争映画ではありません。ドンパチドンパチのアメリカ万歳の戦争
映画を期待してみると痛い目にあいます。

監督は「博士の異常な愛情」のスタンリー・キューブリック。主演は「バーディ」でも紹介
した最近ではゲイ映画が多いマシュー・モディン。「バーディ」を期待して観るとこれまた
ハズレです。あくまで別の映画ですので、「バーディ」は忘れてください。

内容的には2部構成になっていて、前半部分が海兵隊の訓練学校、後半部分になって
はじめてベトナムが舞台になります。ベトナム戦争を扱った映画ですが、前半ベトナムは
忘れてください。後半も他のベトナム戦争映画のことは忘れてください。他は比較対象に
なりません。戦争映画というよりはドラマです。

オープニング、海兵隊の訓練生が頭をバリカンで刈られるところからはじまります。次に
訓練所内にカメラが映し出します。この映像は前作「シャイニング」のホテル内の映像にも
似た撮り方をしています。「シャイニング」もあわせて観て、比較してみてください。カメラが
次に映し出すのは、初老の目を見開き口をへの字に曲げた口汚い訓練教官・ハートマン。
「貴様らはみんなウジ虫だ」とののしるシーンから映画ははじまる。

訓練学校では、はじめはみんな丸坊主で同じに見える。しかし、その中の3人が少しずつ
浮き上がってくる。マシュー・モディン扮するジョーカー、デブ、カウボーイの3人。3人とも
新米の訓練兵だったのが、時間がたつにつれ、落伍者のデブ、それの世話役ジョーカー、
そして一般訓練兵代表カウボーイという構図ができあがる。

落伍者デブは何をやっても失敗ばかり。失敗は同じ訓練兵全員に罰として課せられる。
結果、落伍者デブはだんだん他の訓練兵から疎まれるようになる。

ある晩、同じ宿舎の訓令兵全員からデブはリンチを受ける。デブはこの日を境にだんだん
狂気へとむかっていく。銃をシャーリーンと名付け、銃に話しかけるデブ。厳しい訓練が、
さらにデブを狂気へと駆り立てる。ジョーカーは危険を察し、カウボーイに相談するが、
カウボーイはとりあおうとはしない。

そして訓練学校最後の夜、ジョーカーは宿舎のトイレで、実弾を装填するデブを発見する。

 

後半、ベトナム。ベトナム戦争の従軍記者になったジョーカー。彼は戦争に来て、戦争を
知らなかった。前線から遠く離れた場所での記者生活。暇な記者生活を脱するため、
前線への取材を申請する。戦況が悪化の一途をたどっていたある日、ジョーカーは前線
へと向かうことになる。

前線へ向かうヘリコプターの中。叫び声をあげながら、機関銃を撃ちまくるアメリカ兵。
彼に質問するジョーカー。
ジョーカー:「女・子供も殺したのかい?」
アメリカ兵:「時々な」
ジョーカー:「よく殺せるなぁ?」
アメリカ兵:「簡単さ。」
アメリカ兵:「女・子供は動きが鈍いからな(笑)」
アメリカ兵:「戦争はまさに地獄だぜ」

前線、はじめて戦争を体験するジョーカー。想像と違う、そう感じているのが見て取れる。
ジョーカーの目がだんだんと変わっていく。遠いベトナムで祖国アメリカを離れて戦っている。
しかし、遠いベトナムにあってもやはり求めているのはアメリカなのだ。ロックのノリで人を
殺し、ジョークを言い、しかし決定的に何かが違う。カウボーイの言葉を引用するなら、
「ここには馬がいない、一頭もいないんだ、おかしな国さ」と。

だんだんとマヒしていく感覚。狂気のうちに映画は幕を閉じる。エンディング、R・ストーンズ
の「Paint it BLACK」をバックにスタッフロールが流れる。

映画を観て、何を感じるかというのも人それぞれだ。この映画を戦争映画だと思ってみて、
面白くなかった僕がいて、ドラマだと思ってみて面白いと感じた僕がいた。きっといろんな
意見を持つ人がいると思う。キューブリックの映画はよくも悪くも考えさせられるものが
多い。この映画もその一つだろう。

観て、少しでも何かを感じたら、ぜひ意見を聞かせてほしい。

 

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