M3ノススメ タッチおじさんの場合

笑顔が肝心
 関西の人間の多くが常に笑いを求めている。ベタの笑い、くすくす笑い、大笑いに福笑いと笑いにもいろいろあるが、関西人はとくにベタの笑いが大好きだ。そして必要もないのに無理に面白いことを言おうとして、それがまた面白くなくてもすぐにまたボケをかます。その強引な連続技の勢いで人は思わず笑ってしまう。これが関西人同士だと壮絶で、お互いおかしくもないのに乾いた笑いを相手に送り続ける。そこには決して本当の笑いはない。顔で笑って心で攻撃、という攻撃の姿勢が常にそこにある。これは歳をとるにしたがいどんどんと悪化し、関西のおばさんが会話している様子はまるで自衛隊の演習さながらである。お互い話のつじつまがあっていなくてもおかまいなしにアッハッハッと笑い飛ばし、またアッハッハッを接続語としてのべつまくなく話は続いていく。しかし、すべてをかけて笑いをとろうという人種なので笑いにかける情熱は他の民族にはない特別なものがそこには存在している。

笑いの殿堂
 笑い、それをパソコンに取り入れたらどうなるだろう?笑いとパソコンという一見異なるものの融合は果たしてあり得るのか?そしてその実現を見事はたしたのが富士通という日本の大企業だった。

 10年ほど前、富士通の経営陣に笑いはなかった。FM-TOWNSは見事にコケ、オフコンの富士通と言われつつもパソコンにおいてはばざーるでござーるNECの足下にも及ばず、いつか起死回生の一発を、と昔年の恨みを募らせていっていた。

 そして近年、富士通は高倉健という網走刑務所帰りのナイスガイ、ならぬナイスオヤジをCMキャラクタとすることでスマッシュヒットを飛ばすことになる。対するばざーるでござーるNECは中山美穂ことミポリン(これも死語になりつつあるが)だ。CMというだけで端から端まで出まくるジョージア飯島直子とは対照的に、仕事を選び、ドラマを選び、CMを選びしている中山美穂はたとえ網走帰りとはいえ強敵だった。

 しかし不器用なはずの高倉健が不器用なりにもパソコンを使う様子は、ちまたに氾濫しいているリストラ予備軍のオヤジの心をグっとつかむこととなる。普段から仕事一筋、金はあっても使い方を知らないオヤジたちは、申し合わせたようにDESKPOWERを買い始める。また団塊の世代と呼ばれるオヤジたちにとって”デスク”と”パワー”という非常に親しみやすい言葉の組み合わせは”オレたちのマシンだ”というおかしな団結の精神を引き起こし、そしてまた部長も課長も係長もDESKPOWERを買い始めたことで、この現象はさらに激しいものとなっていった。

 富士通は遂に10年の時を経て、パソコンという市場に”高倉健”というオヤジの名前を刻んだのだった。そして次なる作戦を富士通は開始する。

サルよりもオヤジ
 NECが”バリュースター”などというよくわからない言葉でオヤジを惑わしている間にも富士通は着々とその勢力を伸ばしていっていた。そして次なる作戦を展開しだすにいたって、サルはあまりにも行きすぎだと感じたのか、富士通はそこで最終兵器”アホの坂田”を導入する。しかもその名前たるや”タッチおじさん”、そう、ここでも高倉健に続いてオヤジパワー爆発である。

 このキャラクタがウケたかどうかはわからない。しかし、タッチおじさんメール、そしてタッチおじさんロボときてそのオヤジパワーは全開状態。NECのサルが抽選でしかもらえない景品なのに対し、タッチおじさんははじめからプリインストールが進み、DESKPOWERをBUYしたオヤジ連中はおのずとそのマシンの中に自分の分身を見いだすことになる。

 タッチおじさんのセリフの一つに次のようなものがある。

「”酒飲んでる暇あったらパソコンの一つもさわってみぃ”言われたんやワシ・・・」

 窓際オヤジ、エロオヤジ問わずこのセリフには胸を打たれたという。パソコンをさわりたくてもさわれないオヤジの哀愁がそこに集約されている。酒を飲むしかない、そして今やパソコンがさわれないと仕事ができないという状態にまで追い込まれ、オヤジは絶滅(リストラ)の危機に瀕しているのだ。そしてDESKPOWERの中には言いたくても言えないそのセリフを哀愁たっぷりに代弁してくれるタッチおじさんがいる。オヤジの多くはそれだけでよかったのだ。

ようやく本題へ
 タッチおじさんロボットに関してはDESKPOWER教の布教をする伝道師として、機種を問わずに単体販売された。確かはじめ非売品だったはずなので、もしかすると単に秋葉原あたりの店が勝手に売り出したので正式に発売したのかもしれない。

 とにかくタッチおじさんロボットは世に出はじめる。僕もこれを秋葉原巡礼の際に手にいれようと躍起になった。しかしオヤジたちのヘソクリパワーはタッチおじさんの姿を秋葉原の店頭から抹殺してしまった。そう買い占めがはじまったのだった。結局、秋葉原巡礼の際には手にいれることができず、苦渋をなめた。

 しかし、神は僕を見捨てるようなことはなかった。某高貴な方のご厚意により、タッチおじさんロボットが遂にうちにやってくることとなった。

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▼タッチおじさんのある風景

 タッチおじさんの肌は白い。鈴木ソノ子も真っ青の透き通るような白だ。だが、ただ白いわけではない。タッチおじさんは表情を持ち、その肌を時にはバラ色に染める。また手をあげ、顔をあげて自己主張するすべを持っていた。

 その所作のすべてはパソコンの画面で設定をする。

設定画面

 しかしこの設定がやたらと細かい。ヘロヘロなオヤジロボットなのにこの複雑な設定画面は謎である。きっとこの設定画面だけで多くのオヤジを地獄に送ったことだろう。それくらい面倒でうっとおしい。しかも設定したところでタッチおじさんは自分相手にくだをまくばかりで決して自分を励ましてくれることはない。真剣に設定するにはあまりにバカバカしい。せめてある程度まで設定したものをデフォルト設定としてあらかじめ設定しておくくらいの配慮がほしい。それともDESKPOWERに関してはすでにこの設定があるのだろうか?他社製パソコンでは設定は白紙で、DESKPOWERだったら設定が簡単だという陰謀がそこにあるのではないだろうか?富士通ならやりかねない・・・

M3との関連は?
 まがいなりにも”M3ノススメ”である。M3との関連をここで一つ明らかにしておこう。タッチおじさんとM3を結ぶ線はじつは前に書いたRS-232Cカードにまでさかのぼる。M3でタッチおじさんを使用するためにはシリアル接続でケーブルを繋がないといけない。しかしM3でシリアル接続するためにはばかデカイI/Oポート経由でないといけない。しかしそれではモバイラーとは言えない。モバイラーは常に軽く、常にいろんなモノを持ち歩き、必要もないのに人前でそれをひけらかさねばならぬという掟がある。これはタッチおじさんについても同じである。タッチおじさんは机上のオプションではない、宴会に運動会に慰安旅行にと持ち歩き、笑いの伝導につとめねばいけないという、これまたモバイラーの掟の応用がそこにはある。

 以上のような理由から世の中のオヤジはRS-232Cカードとタッチおじさんロボットを持ち歩き、SONYのAIBOと同じくタッチおじさんを人生の伴侶としなければいけない。ただこれには大きな問題がある。前述のごとく、このタッチおじさんの設定は恐ろしく面倒なのである。だから次の策を講じねばならない。オヤジに虐げられたLIBRERと民よ、今こそリストラオヤジに天誅を与えるべく、M3とRS-232Cカードとタッチおじさんロボットを持ち歩き、上司、同僚、その他のオヤジの横にそしらぬ顔で座り、その力を見せつけねばならない。タッチおじさんロボットのごとくオヤジはすでに我が手中にありということを暗にアピールし、精神的に追いつめ、笑いの中にカミソリを忍ばせるのだ。そしてオヤジがリストラされるその日までオヤジイジメを楽しまねばならない。タッチおじさんを使いパソコン一つ使えないのに威張りくさるオヤジを地獄に堕とすのだ!

最後に
 さて、ここまで読んで今回のテーマはオヤジパッシングに見えたかもしれない。しかし別段オヤジに恨みがあるわけでもなく、そのうち僕自身がオヤジになっていくわけで、ここでオヤジパッシングをしてしまうと結局諸刃の剣でいつか自分自身に跳ね返ってくることになる。オヤジパッシングなどというつもりはまったくなく、単に笑いのために手段を選ばなかっただけだということをここに付け加えておく。

 オヤジな年齢の方々、並びにオヤジ気質な方々、これを読んでもし気分を害されたというようなことがあれば誠に申し訳ない。そしてさらにここまで読んでグっと身につまされる感覚を覚えたオヤジの皆々様、くれぐれもパソコンひとつでリストラされないようせめてタッチおじさんの設定くらいは自分でできるようになりましょう。それでもまだ”パソコンなんて部下にやらせておけばいい”などという方がおられましたら、辞世の句を考え、また最後の時に取り乱すことのないよう潔くリストラされてください。

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