M3ノススメ 双方向の世界へ その壱

BSデジタルの誘い
 2000年12月1日からBSデジタル放送が開始される。これは一見たいしたことがないように見える。単にテレビのチャンネルが増えるだけ、と思っている方も少なくないだろう。僕自身よく人から「BSデジタルって何?チャンネル増えるのがそんなにすごいの?どこが違うの?」などと質問を受けることがある。もっとも僕にその正確な答えを求めるのは間違っている。僕はよくわかっていないのだ。

 ただその意味についてはよくわかる。単純に言えばパソコンと家電の融合の第一波が押し寄せてくるということである。個々に存在したパソコンと家電という別のものが遂に一つになろうとしているのだ。パソコンとテレビが、そして冷蔵庫に洗濯機、電子レンジにドライヤーとありとあらゆる家電製品の融合が行われていく、そんな21世紀の幕開けに他ならないのである。

 かといってアナログの世界が滅ぶのかと言えばそういうわけでもなく、結局のたのたと次の半世紀、もしくは一世紀まるまる使って、そのうち情報家電が当たり前になっていくという長いスタンスでの出来事でしかない。夢物語の完成を見る前に、ハレー彗星が再度やってきて、22世紀万歳なんて言ってる頃にようやくそんな世界が実現されているのではないだろうか。どちらにしても夢は夢であって現実になるにはまだ少々時間がかかりそうだということである。

ビデオ・オン・デマンド
 それではすべてが夢物語なのかと言えばそうでもない。案外目の前に実現できそうなこともある。ビデオ・オン・デマンドと言えば、つい4,5年前までは夢物語のような話だった。ようはネット接続して映画などを読み出せるというもので、見たいと思ったその時にテレビのメニューから”映画”→”アルマゲ丼”と選ぶことで、すぐに世紀末な映画を観ることができるという画期的なものだ。

 ただしこれが提唱され始めた当時はまだ14400bpsのモデムもあるかないかという世の中で当然これが現実的なものだとは思われなかった。現在もまだ64k環境であり、来年あたりにIMT2000規格が登場してはじめて、メガ単位の転送レートが可能になってくる。それまではまだまだといった感があるが、それも遠くはないだろう。そしてそうなってくるとビデオ・オン・デマンドもそう非現実的な話ではなくなってくる。

 ビデオ・オン・デマンドといって普通のアナログのテレビでは当然これにアクセスすることはできない。表示は可能でも接続環境に関しては結局パソコンが必要になってくる(もしくはパソコンのかわりをするボックスのようなもの)。ここで前述のデジタル化というものが意味を持ってくるのである。ようはこの時点でテレビがデジタル化(DF端子だなんだといっても結局表示部はアナログのまま、信号がデジタルになるだけなので”テレビ”が単純に”デジタル化”するというこではない)された情報家電として進化していれば、パソコンというややこしい機械がなくてもテレビだけでネット接続が可能になる。とどのつまりデジタル化というのはパソコンがモニターの中に取り込まれてしまって、しかもそれにチューナーがついているようなもの、と考えるのが一番手っ取り早い。表示に関してはMPEGなわけで、これもまたパソコンの技術そのままが使われているということを考えてみても、この考え方は特別間違っているとは言えないはずである。

 話を元に戻そう。情報家電として進化したテレビはネットに接続し、情報が引き出せるようになる。単にこう考えるとえらく漠然で”ああ、そうなのか”くらいにしか思えない。しかし、ここで考え方を変えると次のようになる。

 サーバーがあって端末がある。

これはじつは家庭内でも可能である。そしてそれがまさに家庭内LANというシステムと変わらないことに気が付くはずである。

 さらに話を進める。ようは家庭内LANで可能ということは同じ事を家庭内LANで実現できるということに他ならない。しかも現在有線のLANであれば10BASEどころか100BASEの環境が当たり前になりつつある。となれば電話回線経由で56kだとか64kだとか、IMT2000でも1Mとか2Mとか、そんな環境よりさらにすごい回線がそこにあるのである。

いざSOHOを進めよう
 スモール・オフィス・ホーム・オフィスと言えばSOHOということであり、これは家庭内LANをビジネスユースに言い換えただけで中身はほとんど一緒である。働いている場合にはSOHOであり、趣味でやっていると家庭内LANなのである。SOHOと言えばえらく偉そうに聞こえるがその実やっていることは趣味のネットワークと変わらない。

 これが大きくなるとイントラネットであり、さらに大きくなるとインターネットだとか、その他大きなネットワークという世界規模のものになってくる。詳しくはTOM.Kさんあたりに聞いていただけるときっと詳しく答えてくれるに違いない。僕はだいたいの概要をぼやぁっとしかわかっていないので質問は無用である。

 さて、この整備された家庭内ネットワークという環境をいかにして使うのか?これが非常に大きな問題である。整備はしたものの、お父さんの趣味であり、息子の横暴であっては家族にとってなんの利益もない。お父さんが日曜大工以上に精を出して配線をしても、そんなものはトドが転がりまわっているよりも面白くない芸にすぎない。

 しかしこのネットワークの活用方法を提案することで、お父さんはプロデューサーにだって昇格できるのである。そして家長としての尊厳を取り戻し、サイバーパパと呼ばれる日がやってくるに違いない(サイババとは無関係)。

 その活用方法とは「テレビを見られるようにする」というそれだけのことである。正確にはテレビではなく”ビデオ”なのかもしれないが、この場合は”テレビ”のほうが家族にはわかりやすいので”テレビ”としておく。とにかくコツコツと各部屋に配線した家庭内LANというネットワークを使い”テレビ”を見られるようにすることがこれからのパパの役目なのである。

SONYの提案
 SONYが先日HDD録画装置(いわゆるHDDに録画するデジタルビデオ)を発表し、販売を開始した。加えて従来からSONYのデスクトップパソコンにはHDDに録画できるというすごい機能を持っているものが存在した。これが何を意味しているのか。僕自身よくわかっていなかった。HDDに録画できたとしてもそれを取り出す環境がなければ、単なるスタンドアローンなマシンでしかない。しかもこれを持って歩くということは不可能なのである。なんのための提案だったのか?

 しかし今、僕はそのSONYの提案の意味を少しずつ理解している。HDDへの録画というのはそれ単体ではたいした意味を持たないことは前述の通りである。しかしこれをネットワークに繋ぐことで、その端末からも同じ情報が取り出せるようになるという非常に当たり前のことができるようになる。”同じ情報”などという表現ではわかりにくいかもしれない。”同じ映像”を複数のマシンから同時にアクセスすることができる、とするほうがわかりやすいだろう。さらに言えば、一つのデータで複数のマシンが同じデータを共有するというLANにおいては当たり前のことが”テレビ”でも可能になるのである。ここで言う”テレビ”とは各端末であるパソコンを指す。

 そしてこれが家庭内LANにおける”ビデオ・オン・デマンド”である。単純に”HDDレコーディング”だとか”データの共有”だとか言っている間はよくわからないことも、じつはそれがどういうふうに活用できるのかを考えた時には、その意味をよく理解することができる。SONYはそれをわかっているからこそ提案し、作り上げてきたのである。僕自身はVAIOが売れている売れていないということよりも、そのアイデアこそ賞賛に価するように思う。SONYの考えは間違っていない。

データの構築
 ただこの”ビデオ・オン・デマンド”には決定的な問題点がある。それはソフトの問題である。ネタがなければそこにアクセスする意味がない。そこにデータを蓄積してあるからこそ、そこにアクセスする意味がある。そしてこの場合のデータとはつまりは”映像データ”を意味している。

 SONYのマシンではHDD録画が可能である、というのは繰り返すまでもない。しかしのべつまくなくタレ流しのテレビのデータをHDDにため込んでいったのでは半日もしないうちにHDDがパンクする。HDDがさらに大容量化した近未来の世界であればともかく、現状これを実現するためには少なくともHDDの容量がいくらあっても足りないのである。ではどうすればいいのか?

 データは必要なものだけにする、もしくは好きなものだけにする、という選択が必要になってくる。これは常日頃から普通にやっていることとなんら変わらない。自分だけのライブラリーを作成することにより、家庭内”ビデオ・オン・デマンド”を実現するのである。ようは自分だけのライブラリーを自分で構築する、という手間をかけなければ何もできないのである。

 ではいかにしてライブラリーを構築していけばいいのか?それについてはLibrettoの活用法とあわせて次回以降、詳しく書いていきたい。とりあえず今回のところはそれに至る経緯を書いてみた。

つづく

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