第三回 実録 チョイでコケた日

 

ぼくはコケたのだ

 2008年4月16日のことだった。

 ツタヤのバイト仲間だった長谷川さんが第2子出産をしたということで、勝ぴーを誘って三菱病院までお祝いに行った。ところが病院に着く手前、ほんのあと二角曲がれば病院というところで、T字路を右折しようとしたら、すてっとコケてしまった。はたして何が起こったのか、コケた瞬間はさっぱりわからなかった。それくらい普通に曲がって、すてっとコケた。

 「アイタタタタ」

と足を引きずって立ち上がり、買ったばかりなのにやぶれてしまったジャケットを残念そうに見やるぼくがいた。

 「大丈夫?」

勝ぴーが声をかけてくれて、チョイを起こしてくれた。

 「ええ、なんとか大丈夫です。」

と照れ笑いしながら、ダメージを受けた箇所を確認するけど、そんなにはひどくない。買ったばかりのリアボックスに傷、これまた買ったばかりのバーエンドミラーにも傷、ステップボードにエンジンカバーとざりっとコケた傷跡が残っているけど、スピードが出ていなかったこともあり、ハンドルがまがったり、車体がまがったりということはない。

 なんとかチョイにまたがり、もう一度走り出す。あと二角というところだったので、ほどなく病院について駐輪場から歩き出すと足が痛い。そりゃコケた直後だしな、と足を引きずって産科へ向かい、友だちの名前を伝えて病室を教えてもらう。

 部屋に入ってすぐそこに新生児を出した旧姓・長谷川さんがいて、お祝い言って、ぼくがコケて大変だったと笑い飛ばし、長居をしてはいけないと帰ろうとするが、足がうまく動かない。

 「コケた直後だし、しゃーないわ」

と笑いながら歩き出し、エレベーターのドア越しにバイバイと手を振った。

 その直後に立ちくらみ。エレベーターから出たところで、まわりに星がいっぱい輝き、これはダメだとすぐそこの待合室の椅子に腰掛けた。

 「歩ける?大丈夫かな?」

と心配してくれる勝ぴーに申し訳ないと笑って伝え、さて行こうと立ち上がろうとしたらまったく右足に力が入らない。カクっどころのさわぎではなく、これはまずいと思って、

 「すみません、ちょっと車いす取ってきてもらえますか」

ときっと完全に血の気の引いた顔で言った。ついでに整形外科で診てもらえるように予約を入れてもらって、痛い足を抱えて待つこと1時間。ようやく診てもらって、

 「折れてるかもしれませんね」

と言われ、レントゲンを撮ってもらいに放射線科へ。もはや自分では動かすことができなくなってしまった足を無理矢理車いすに乗せて出発。

 レントゲン撮影室ではまっすぐしてくださいだと、こんなふうに曲げてくださいだのと言われてたいしたことやってないのに脂汗。そのくせ結構時間がかかって、ようやく診察室に戻ると、

 「右膝のお皿が骨折してますね、ほら」

とレントゲン写真を見せられる。見事に真っ二つ。この時もまだ一緒にいた勝ぴーによると、

 「あの写真見た時、ダメだと思ったよ」

と言われたくらいにはっきりと真っ二つになっていた。

 その場ですぐにギブス固定ということになり、

 「じゃ、立ってください」

と立ちあがると今まで経験したことのないような立ちくらみ。

 「先生、こんなにフラフラで大丈夫なんでしょうか?
  倒れそうなんですけど??」

と悲壮な声をあげると、

 「あ、そうですか、じゃ、横になって巻きましょう」

と寝ころんで巻くことに。

巻いたら巻いたでえらく痛い。

 「こんなに痛いもんなんでしょうか?」

と尋ねると、

 「じゃ、切り目を入れておきます」

と電ノコ取り出して、ギブスにまっすぐ切れ目を入れる。

 それでもギブスの重さがとんでもなく重い。こんなに重いのかってくらいに重い。実際にはそれほど重くないんだろうけど、負傷した足では自由に持ち上げることもできず。

 さすがにチョイには乗って帰れそうにないので、この時点で勝ぴーに一旦うちまで乗って帰ってもらった。そのうちうちの母親が駆けつけ、さらに奥さんの実家に電話して子どもを保育園に迎えに行ってもらう手配をした。

 結局その後、さらに1時間ほど待ってMRIの検査。ところがMRIのある部屋は床はつながっているのに別棟になっていて、そこだけほんの少し段差がある。これを車いすで越える時に足をあげてくださいと言われるがあがらない。ほんの数センチのことなのにこれがまったくあがらない。

 その時、はじめてバリアフリーの必要性を実感。

 長いことかかって検査を終え、診察室に戻ってMRIの検査結果を確認してもらい、レントゲンでは見えない部分に問題はないとのことで、ギブス固定3週間が決定となる。

 今まで大きいバイクでコケたこともあったが、骨折なんてしたことはなかったし、まさかチョイでコケてこんな大事になるとは思ってもみず。コケた瞬間もよくわからないながらも、自転車でコケた時のあの感覚だな、と一人思っていたのがウソのよう。

 なにより事故直後は膝が割れても歩いていたわけで、そのこと自体に自分自身が驚いた。


後日談とその後の経過

 そういえば、と思いついたのが次の日のこと。確か保険が出るはずだとソニー損保に電話をかけてみた。ファミリーバイク特約で自損事故の場合でも通院費用は出たはず。

 早速電話すると何時間か後には調査員が来て、チョイの写真を撮って、三菱病院の近所まで行って写真を撮ってとさすがにやることが素早い。

 保険に関しては通院一日につき4000円が出るということで、なんとか病院に行って帰ってする往復のタクシー代(うちからだと1メーターx2)くらいは出そうなのでほっとした。入っててよかった自動車保険。任意保険なしにバイクに乗る人も多いけど、万が一を考えると入っておいたほうが絶対お得。

 特にファミリーバイク特約は125cc以下のバイクであれば何台でもカバーしてくれて月500円だけなので、安心料としても十分安い気がする。

 5月20日現在で6回通院、5月7日にギブスが取れるという時には、かなり無理矢理ではあったけど、チョイで行ったのでタクシー通院は結局3回。あとは診察代とか、毎回のレントゲン撮影代とか、結構かかったけど、それでも計算上はリアボックスを買い直してステップボードとエンジンカバーを新しくするくらいはなんとか出た計算になる。

 これで保険がなければコケてがっかり、壊れてがっかり、がっかりばっかりで何も得る物がなかったということになりかねないけど、今まで払ってたぶんくらいは取り戻したと思えばちょっとは気が楽だ。

 普通に歩けるようになるまでにはまだまだ時間はかかるようだけど、一足先にチョイのリアボックスは買い換え、ステップボードとエンジンカバーも付け替えた。これはこれで自分の足が真っ新になったような気分。

 心機一転、のんびり走って行こう。

 

 

2008/05/22

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